※この記事は個人の体験と知見に基づいています。
医療的な助言ではないこと、また成果を保証するものではありません。
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1.イントロ: なぜ、経験を感情ではなく論理で残す必要があるのか

あなたは、過去の成功や失敗の経験を、誰でも再現できる「知恵の資産」として活用できていますか?
技術的な問題は解決できても、人間関係やプロジェクト運営といった非技術的な問題で消耗し続けるベテランSEには、共通の原因があります。それは、「経験を感情の文脈から切り離せていない」ことです。
感情ノイズは、ベテランSEであるあなたの現場で、知らず知らずのうちにエネルギーを奪っています。例えば、以下のような経験はないでしょうか?
- 上司や顧客からの無意味な「丸投げ」や曖昧な指示に対し、家に帰った後も怒りが収まらず、何度も頭の中で反芻してしまう。
- 部下や後輩の単純なミスを自分事のように過剰に受け止め、責任感から、その夜は自分の心のバッファを大きく削って対応してしまう。
- 会議中、論点がズレたと気づいた瞬間に、感情的に消耗し、その場を構造的に修正する冷静さを失ってしまう。
このように、経験豊富なSEを疲弊させる真犯人は、技術的な難しさではなく、これらの「感情的なノイズ」と、それらを論理的に処理できない現状なのです。
私たちはこれまでの連載で、「心の消耗を防ぐ防御の技術」を確立してきました。第3回で紹介したように、回復ルーティンや無関心化の技術を導入することで、心のバッファを確保する「防御ライン」は構築できたはずです。
しかし、防御ラインを築くだけでは、現状維持にしかなりません。次に必要なのは、確保した心のバッファを、「経験を再利用可能な資産」に変えるための「攻めの技術」です。
経験を単なる過去の記憶として終わらせず、誰でも再現できる普遍的な知恵として言語化するステップです。
この「IF-THEN-RESULT」フレームワークは、感情と経験を意図的に分離することで、HSPの課題を克服します。
問題が発生したとき、「なぜこんなことになったのか」と感情的に反応する代わりに、このフレームワークはあなたに「あなたはシステム設計者である」という客観的な視点を与えます。
つまり、人間関係のノイズを「バグ(IF)」として捉え、感情を交えず「論理的な修正行動(THEN)」を記述させるのです。
これにより、あなたは問題解決のたびに消耗するのではなく、知識体系を整理し、専門性を高めるという資産構築にエネルギーを注げるようになるのです。
2.IF-THEN-RESULTのフレームワークとは

このフレームワークは、あなたが経験した出来事や問題解決を、感情という「ノイズ」を排除し、再利用可能な「普遍的な知恵」に変えるための道具です。
- IF(状況):
- プログラムにおける「条件式」や、システム開発における「問題発生時の状況」に相当します。感情は排除し、客観的な事実のみを記述する。
- THEN(行動):
- IFの条件に対して実行した「論理的な修正行動」や「設計上の対応」に相当します。「なんとなく」「頑張って」といった曖昧な言葉は排除する。
- RESULT(教訓):
- 行動の結果得られた**「汎用的なルール」や「設計思想」**に相当します。これが後進指導や将来の自分を助ける「知恵」そのものになります。
実際に事例を以下に示します。
📌 事例1:上司からの無意味な指摘に心を乱されたとき
- IF(状況):
- 上司から自分のやった仕事に対して、適当な指摘をされた。
- THEN(論理的行動):
- いつもなら、イラっとして反論したりするところを、一旦持ち帰って指摘について考えた。
- RESULT(普遍的な教訓):
- 無意味な指摘だとしても一旦持ち帰って考えれば、もしかしたら気づきがあるかもしれない
📌 事例2:後輩指導での疲弊を「リスク管理」に変えたとき
- IF(状況):
- 後輩のミスでプロジェクトの進行が遅延した。それに対して、管理者である私が全ての作業のチェックや、実作業を実施できるわけではないのに、過剰に責任感を感じて、疲れ切ってしまった。
- THEN(論理的行動):
- 全ての作業のチェックや作業自体が行えるわけではないことを自覚し、自分がリスクに感じていることを後輩に伝えて指導を行った。
- RESULT(普遍的な教訓):
- 自分の長年のキャリアや経験は、自分の作業(チェック)に使うだけではなく、どういう考えて動くべきだと思っているかを後輩に伝え、指導・育成していくこと。
3.【実践】感情ノイズを論理的に分離する活用事例

IF-THEN-RESULTは、単なる記録法ではありません。これは、感情的な消耗をストップさせ、経験を「指導可能な技術」に変えるための実践ツールです。
このセクションでは、あなたが直面してきた具体的な「感情ノイズ」を、いかに論理的に処理し、知恵に変えたかの事例を解説します。
事例1:上司からの無意味な指摘に心を乱されたとき
- IF(状況):
- 【あなたの実際の仕事で、上司からの理不尽または曖昧な指摘があった具体的な状況を記述】
- THEN(論理的行動):
- 【あなたが感情的に反応する代わりに、事実だけを切り分け、論理的にとった行動を記述】
- RESULT(普遍的な教訓):
- 【この経験から得られた、「過度な責任感」や「感情的な反芻」を防ぐためのルールを記述】
事例2:後輩指導での疲弊を「リスク管理」に変えたとき
- IF(状況):
- 【あなたの指導した後輩がミスを繰り返し、あなたがその責任と疲弊を過剰に感じていた状況を記述】
- THEN(論理的行動):
- あなたは、感情的な「頑張れ」ではなく、後輩の疲労度を**「心のバッファ〇%」という客観的なデータ**として伝えた。
- RESULT(普遍的な教訓):
- 【この行動の結果、後輩指導やチーム運営において、感情的な負荷を減らし、成果を出すために必要な普遍的な知恵を記述】
4.キャリアの安定を担保する「過度な期待」の戦略的引き下げ

本記事で解説した「IF-THEN-RESULT」は、単なる知識の整理術ではありません。
これは、HSP気質のベテランSEが、20年というキャリアを通じて培った貴重な経験を、「感情ノイズ」から完全に切り離し、再利用可能な論理的資産として固定化する、非消耗型の防御技術です。
この技術を習慣化すれば、あなたは問題解決のたびに疲弊する人ではなく、知識体系を整理する専門家へと変わります。
まずは、直近で最も消耗した経験を一つ選び、【事例1】や【事例2】を参考に、紙やドキュメントに「IF-THEN-RESULT」の三要素だけを書き出してみてください。
感情的な言葉を一切排除し、機械的に事実だけを記述することがコツです。
その瞬間、あなたは「問題に悩むSE」から「問題を分析する設計者」へと視点を切り替えることができます。
この「IF-THEN-RESULT」こそが、HSP気質のベテランSEが心の安定を長期的に持続させ、過度な期待に縛られずにキャリア資産を築くための唯一の技術です。
感情的な消耗をストップさせ、論理という最大の武器で未来のキャリアを守りましょう。
ここまで読んでいただいてありがとうございます。また次の記事でお会いしましょう!

