※この記事は個人の体験と知見に基づいています。
医療的な助言ではないこと、また成果を保証するものではありません。
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システムエンジニアとして現場に立ち続けて30年近く。これまで数え切れないほどのプロジェクトに関わり、多種多様なリーダーやマネージャーと共に仕事をしてきました。
これはIT業界に限った話ではないかもしれませんが、特にSEの現場では、その中で、定期的に遭遇する「ある不可解な現象」があります。 それは、「なぜ、この人がこのポジションに就いているのか?」と首を傾げたくなるような、決定的に現場と噛み合わないリーダーの存在です。
- 自分で動かない、決断しない。
- 指示が二転三転し、朝令暮改は当たり前。
- 課題をそのまま現場に丸投げし、自分では1ミリも考えない。
真面目に現場を支え、品質に責任を持つエンジニアほど、こうした上司の振る舞いに激しい憤りや疲弊を感じているはずです。
私も先日、まさにそのような場面に直面し、危うく感情のブレーキが外れそうになるほどのストレスを味わいました。
その場面(オンライン会議)では必死に深呼吸を繰り返し、おそらくやばい目つきになっていましたが、オンライン先の相手には伝わっていないことがよかったと思えるほど、頭に血が登り、激昂しようになるような状態でした。
会議が終わった後、ぐったりしてしまい、無駄に疲れてしまったことを覚えています。
そんな理不尽な出来事があった後の帰宅途中で、一人で日高屋の生姜焼きをつつきながら自問自答していました。
なぜ、組織においてこうした「バグ」のような人事が再生産されてしまうのか。
なぜ、実力のある人間が疲弊し、そうでない人間がのうのうと居座れるのか。そのメカニズムを客観的に理解することは、もはや単なる知識の習得ではなく、私たちが現場で正気を保つための「生存戦略」でもあります。
今回は、30年近いキャリアで見てきた実態をもとに、現場を振り回すリーダーが生まれる組織の構造的欠陥と、彼らに自分の人生を削らせないための「防衛的処世術」について掘り下げてみたいと思います。
第1章:なぜ無能なリーダーが量産されるのか

有能なエンジニアが無能な上司に変わる「ピーターの法則」
「なんでこの人が?」という疑問を解き明かす上で、避けて通れない有名な理論があります。教育学者ローレンス・J・ピーターが提唱した「ピーターの法則」です。
その内容は至ってシンプルで、かつ残酷です。 「階層組織において、人は能力の限界まで昇進し、その地位に留まり続ける。その結果、あらゆるポストは職務を果たせない無能な人間によって占められる」というものです。
例えば、卓越したプログラミング能力と責任感を持つエンジニアがいるとします。
彼は現場で成果を出し続け、その「有能さ」ゆえにリーダーやマネージャーへと昇進します。しかし、現場での「作る能力」と、組織での「管理する能力」は全くの別物です。
彼は管理職としての適性がないにもかかわらず、現場時代の功績で昇進してしまったため、そのポジションで「無能化」し、降格することもなく居座り続けることになります。
評価しているのは「現場」ではなく「上」であるという現実
もう一つの理由は、評価の仕組みそのものにあります。 現場の私たちは「どれだけ実務を円滑に進め、課題を解決したか」で人を評価しますが、会社という組織は必ずしもそこを見ていません。
上位層がマネージャーに求めるのは、現場の平穏ではなく「自分たちが安心できる報告」や「指示を忠実に下に流す拡声器としての機能」だったりします。
たとえ現場が血を流していても、上が求めるタイミングで「問題ありません」と(根拠がなくとも)言い切れる人、あるいは自分で考えずに上の意向をそのまま現場に丸投げできる「扱いやすい人」が、組織のバグによって評価されてしまうケースが後を絶ちません。
【なぜ「バグ」は修正されないのか】
さらに問題を根深くしているのは、こうした適性の不一致が、組織の中では「安定」として機能してしまう側面があることです。
- 「意思決定しない」ことによるリスク回避
- 自分で考え、決断するリーダーは、同時にその責任も負います。
- しかし、上からの指示をそのまま流すだけのリーダーは、「自分は言われた通りにやっただけ」という無敵のポジションを確保できます。
- 組織が保守的であればあるほど、こうした「波風を立てない無策」が、消極的な評価として生き残ってしまうのです。
- 現場の「有能さ」へのフリーライド(乗りかかり)
- 無能なリーダーが居座れる最大の理由は、皮肉にも現場のエンジニアが有能であることにあります。
- リーダーが機能しなくても、現場が必死に泥をかぶり、調整し、帳尻を合わせてプロジェクトを完遂させてしまう。
- その結果、上層部からは「あのリーダーの下でもプロジェクトは回っている」と誤認され、バグが修正される機会が失われていくのです。
組織という巨大なシステムを書き換えるのは、一エンジニアの手に負える仕事ではないかもしれません。であれば、私たちは自分の心のCPUを、彼らのために浪費すべきではないのです。
第2章:現場を疲弊させるリーダーの3大特徴

こうした組織構造のバグによって生まれた「リーダーという名の拡声器」たちは、現場において共通の行動パターンを見せ始めます(全てではないと思いたい気持ちはあります)。
私が30年近い現場経験で目にしてきた、エンジニアのメンタルと時間を奪う代表的な特徴は以下の3つです。
1.「思考のコスト」をすべて現場に払わせる
彼らの最大の特徴は、自ら考え、整理し、判断することを放棄している点です。他部署や上位層からの要求を、内容を吟味することなくそのまま現場に「丸投げ」します。
本来、リーダーの役割は「情報のフィルタリング」や「優先順位の整理」であるはずですが、彼らはそれを行いません。
結果として、現場のエンジニアは「何を、なぜ、いつまでにやるのか」という根本的な整理から一人で抱え込むことになり、本来の業務以上に「思考のコスト」を浪費させられるのです。
例えば、通常業務と並行して会社からの特命案件が舞い込んできたときのこと。
目的は曖昧で、どう着地させたいのかも明確にされないまま、「組織としてやらなきゃいけないから、とりあえず検討して進めておいて」とだけ言われ、丸投げされたことがありました。
役割分担、スケジュール、具体的な対応内容……。本来リーダー層が交通整理すべき領域をすべて現場で検討せざるを得ず、結果として本来のメイン業務のクオリティまで脅かされる。
「このままでは良い仕事ができない」という危機感こそが、現場のエンジニアのモチベーションを最も削ぐ原因になるのです。
2.「一貫性の欠如」と「朝令暮改」
自分の確固たる信念や技術的背景を持たず、周囲の意見に流されやすいのも特徴です。
朝言っていたことと夕方の指示が正反対になることも珍しくありません。
これは、彼らが「最後に聞いた声の大きい人の意見」に同調してしまうからです。一貫性のない指示は、現場に無駄な手戻りを発生させ、エンジニアのモチベーションを根底から破壊します。
基本的には現場に丸投げであるにもかかわらず、上層部から何か言われると、即座に方向性を変えて現場に下ろしてくる。これは現場にとって「最悪」の振る舞いです。
現場が必死に検討し、積み上げてきたロジックを平気で反故(ほご)にし、またゼロからのやり直しを強いる。
私自身、かつて会議のたびに方向性を変えられ、その都度検討し直しをさせられた経験がありました。
その時、「自分はこうはなるまい。自分の発言には最後まで責任を持たなければならない」と強く心に刻むきっかけにはなりましたが、実際にそれをやられる側のダメージは計り知れません。
「真面目に検討するだけ損だ」
そう思わされ、現場が思考を停止させてしまうことこそ、組織にとって最大の損失ではないでしょうか。
3.「不都合な事実」の書き換え(保身の心理)
責任の限界に達したリーダーは、自分を守るために無意識に、あるいは意図的に事実を書き換えることがあります。
これは、特定の個人の性格の問題というよりも、保身を優先せざるを得ない組織構造が生み出す『負の行動パターン』と言えます。
不都合な事実を書き換えてしまうリーダーが、なぜどの組織にも一定数現れてしまうのか。その背景にある心理を紐解いていきます。
例えば、指示が二転三転したせいで進捗が遅れた際、上層部に対して「現場の検討が遅れている」「現場の理解力が足りない」と、さも現場に非があるかのような報告をするケースです。
最悪なのは、以前の自分の指示と矛盾が生じた際に「そんなことは言っていない」「そんな報告は受けていない」と、現場の記憶や記録を否定する振る舞いです。
この「梯子(はしご)を外される」感覚こそが、現場が最も深いダメージを受け、組織への信頼を失う瞬間と言えます。
こうした「記憶の書き換え」が平然と行われる環境で、真面目に正面からぶつかっていては、私たちの心と体はいくつあっても足りません。
では、組織のバグが放置され、事実さえも書き換えられてしまうような不条理な現場で、私たちはどう生き残ればいいのでしょうか。
私が30年近い経験、そして最近の苦い実体験から学んだ、自分を壊さないための「武器」を次の章でお伝えします。
第3章:彼らに振り回されないための「防衛的処世術」

「なんでこの人が?」と思うようなリーダーの下で、真面目に向き合いすぎて自分が壊れてしまっては元も子もありません。組織のバグをすぐに直すことができない以上、私たちは自分自身を守るための「防衛術」を身につける必要があります。
1.エビデンスを「面」で固定する
彼らの「言ってない」「聞いてない」を防ぐ最大の手立ては、1対1の状況を作らないことです。
指示を受ける際や重要な報告をする際は、必ずチャットツール、あるいは、決定事項をその場でメモし、『認識に相違ないか』と即座にメールやチャットで関係者全員に共有するなど記録に残る形で行うか、あるいは「同僚やチームメンバーがいる前」で確認を取るようにします。
もし後から指示を翻そうとしても、「あの時、〇〇さんも同席してこう決まりましたよね」と複数の記憶(面)で事実を固定できていれば、相手も安易な事実の書き換えができなくなります。これは攻撃ではなく、プロとしての正当な「リスク管理」です。
2.「期待」のコストをゼロにする
私たちがストレスを感じる大きな要因は、「リーダーなら当然こうしてくれるはずだ」という期待と現実のギャップにあります。
「拡声器タイプ」や「丸投げタイプ」だと分かっている相手には、最初から意思決定や情報の整理を期待しないことです。
「この人は情報を右から左へ流すだけのインターフェースである」と定義し直すだけで、指示が二転三転しても「ああ、またバグが起きたな」と、一歩引いた視点で冷静に対処できるようになります。
ここで、私自身の内省についても触れさせてください。 私は長年、自分の能力を極端に過小評価してきました。「自分にできる程度のことは、一回り下の世代だって当然できるし、ましてや自分より上のリーダーができないわけがない」という思い込みが人一倍強かったのです。
この「自分の能力を低く見積もる癖」が、皮肉にもリーダーに対する過剰な期待を生んでいました。
「上の人間なのだから、当然これくらいはやってくれるはずだ」とハードルを高く設定し、それが裏切られるたびに勝手に落胆し、疲弊しきっていたのです。
今の私にとって、「期待する」ことは「自分の能力を不当に低く見積もっているサイン」でもあります。
「リーダーなのだから自分より優れているはずだ」という思い込みを捨て、相手を「機能不全を起こしている等身大の人間」として見る。この歪んだ認知を少しずつ緩めていくことが、自分自身を守るために不可欠な作業なのだと、日々内省を続けています。
3.「無」の時間を戦略的に作る
理不尽な会議や、中身のない指示に感情を動かされそうになったら、心の中に「防波堤」を築きましょう。
相手の言葉を真正面から受け止めるのではなく、ただの「音」として聞き流し、自分は淡々と「事実」だけを返す。
感情のスイッチをオフにし、プロフェッショナルとしての実務だけに集中する時間は、自分を削らないための究極の自衛手段です。
理不尽な状況に対して、常に「正しさ」で対抗しようとすると、私たちの精神はいつか燃え尽きてしまいます。そこで必要なのが、あえて「何も考えない、何も反応しない時間」を戦略的に作ることです。
具体的には、以下の2つのアプローチがあります。
「反応しない」練習(勤務中)
理不尽な会議や、一貫性のない指示が飛んでいる最中、あえて心の中で「今は業務外のノイズを処理しているだけだ」と割り切り、感情をオフにします。
相手の言葉を真正面から受け止めず、ただの「音」として受け流す。この「心のシャッター」を下ろす技術が、自分を摩耗させないコツです。
実を言うと、私はこれがとても苦手です。納得がいかないことがあると、つい感情が昂り、強い言葉を口にしてしまうことも少なくありません。 だからこそ、私は今、日々この「練習」を繰り返しています。
怒りが湧き上がった時は、まず深く息を吸い、深呼吸を繰り返す。 感情に支配されそうな自分を一歩引いた場所から眺め、少しずつ怒りを鎮めていく。 そんな泥臭い試行錯誤を続けています。
完璧にできなくてもいい。「自分を守るためのトレーニング」として、少しずつシャッターを下ろせる時間を増やしていく。その積み重ねが、自分自身を救うことになると信じています。
物理的に「会社」を遮断する(勤務外)
仕事が終わった瞬間、あるいは休日は、一切の「会社的な思考」を停止させます。趣味に没頭したり、体を動かしたりして、脳を強制的に別のモードに切り替えるのです。
私自身、ジムで汗を流す時間は、仕事のバグだらけのロジックから解放され、自分を取り戻すための大切な「無」の時間になっています。
正直ジムに行けなくなったらストレスで倒れてしまうかも。会社以外に思考を向けられる先って結構大事なので、一つでもいいから持っておくことをおすすめします。・
私たちの人生の主役は、会社でも上司でもなく、自分自身です。 「無」の時間を作ることは、決して逃げではありません。明日の自分のために、大切なエネルギーを「温存」するという、エンジニアとして極めて合理的な戦略なのです。
結び:自分の「機嫌」と「人生」を、組織に明け渡さない

今回、あえて「組織改革」ではなく「個人の自衛」に焦点を当てて書きました。
「なんでこの人が?」という疑問を抱えながら働くのは、本当にエネルギーを消耗するものです。しかし、今回お話ししたように、それはあなたの能力の問題ではなく、組織が構造的に抱えている「バグ」のようなものです。
そのバグを一人で直そうとして、あなたが燃え尽きてしまう必要はありません。
組織を変えることはできなくても、自分の「守り方」を変えることは今日からでも可能です。エビデンスを固め、期待を捨て、大切な自分の時間を死守する。
私の28年のキャリアも、決してスマートなものだけではありませんでした。今でも日々、怒りに震えたり、自分を過小評価したりしながら、泥臭く「自分を守る練習」を続けています。
30年近くこの業界にいて思うのは、どれだけ理不尽な上司や、無責任な他部署に振り回されたとしても、彼らはあなたの人生の責任までは取ってくれないということです。
正論をぶつけて戦う日があってもいい。 「無」になって嵐が過ぎるのを待つ日があってもいい。 大切なのは、どんなに現場が荒れていても、一歩会社を出たら自分の時間を100%取り戻すことです。
理不尽な会議の後に食べる温かい夕飯の味や、週末に汗を流す趣味の時間。そうした「自分のための時間」を死守することこそが、長くこの現場で生き残るための、一番の秘策なのかもしれません。
今日、あなたが感じたその違和感や怒りは、あなたが誠実に仕事に向き合っている証拠です。その熱量を、無能な誰かを恨むためではなく、自分を労い、明日を少しだけ楽に生きるための知恵に変えていきましょう。
さあ、今日はもうPCを閉じて、美味しいものでも食べに行きませんか。
自分を労わることは、エンジニアとしての責任放棄ではなく、持続可能なキャリアのための『メンテナンス』です。
【さらに深く自分を守るために】
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。 この記事では「組織のバグ」について書きましたが、私が28年のキャリアの中で実際にどうやってその地獄から這い上がり、今もなおエンジニアとして「自分」を保ち続けているのか。
その全記録を、約12,000文字の有料noteにまとめました。
1998年の就職氷河期から始まり、十二指腸潰瘍手前まで追い詰められた私が、どうやって「市場価値」と「心の平穏」を両立させてきたのか。
正直、私の恥部もさらけ出しています。ですが、かつての私のように理不尽な現場で独り震えている誰かの力になれるなら、これ以上の喜びはありません。
現在、公開記念のキャンペーンとして1ヶ月限定価格(500円)で公開しています。もし、あなたのこれからのキャリアに「合格点」をつけたいなら、ぜひ手に取ってみてください。

