20年のキャリアで「向いていない」と打ちひしがれた4つの瞬間

私がこれまでのエンジニア人生で、本気で「もう辞めるべきか」と悩んだのは、主に以下のような状況に陥ったときでした。

  • 持っている技術スキルで全く太刀打ちできなかった時
    • 元々バッチ処理や内部処理の開発が得意だったのですが、ある時、自分の強みが全く活かせない(共通点といえばUNIX操作くらいしかない)未知の現場へ配属されました。設計書を見てもイメージが湧かず、毎日「仕事ができないダメな自分」を責め続けていました。
  • 周囲の優秀なメンバーと比較して心が折れた時
    • 配属されたプロジェクトに、自分と同世代の非常に優秀なエンジニアが集まっていた時期がありました。誰かに直接責められたわけでもないのに、周りと自分を勝手に比較しては「みんなこの仕事に向いているのに、自分はなんて役に立たないんだ」と勝手に孤立感を深めていました。
  • 未経験の「上流工程」を丸投げされた時
    • キャリアが進むと、要件定義や大規模な見積もりといった上流工程を任されるようになります。十分な知識やサポートがないまま、いきなりこれらを振られた結果、リスク予測が甘くプロジェクトを大失敗させてしまったことがあります。この時も「自分にリーダーシップや上流の才能がないからだ」と猛烈に自責の念に駆られました。
  • やることなすこと全て否定され、叱られ続けた時
    • 転職直後に配属された現場では、チームの文化に馴染めず、自分の作業や発言のすべてを否定されるような日々が続きました。「知らないことは悪」と言わんばかりに毎日叱責され、この時期が一番「エンジニアとしての適性がゼロなのではないか」と思い詰めていました。
目次

2. なぜSEは「向いていない」と思い込みやすいのか?

当時の私を含め、多くのエンジニアが「向いていない」という罠にハマってしまうのには、IT業界特有の構造的な理由があります。

① 求められるスキル領域が広すぎる

プログラミング言語だけでなく、インフラ、データベース、ネットワーク、セキュリティ、さらには顧客とのコミュニケーションやマネジメントまで。

これら全てを完璧に網羅しようとすると、脳のメモリはあっという間にオーバーフローします。自分のスキルの棚卸しができていないと、新しい現場に行くたびに「自分は何も知らない、スキルが足りない」と錯覚しやすくなります。

② 「常に最新技術を追うべき」という過剰なプレッシャー

業界内には「最新技術を常に勉強し続けなければエンジニアとして価値がない」という風潮があります。もちろん学ぶ姿勢は大切ですが、日々の業務が忙しい中で外部の新しい技術すべてに手を広げるのは不可能です。最新技術をキャッチアップできていない=向いていない、というのは完全に「認知のバグ」です。

③ 深刻な人手不足による「スキルアンマッチ」の常態化

現場は常に人手が不足しているため、企業の採用面談でも「スキルが完全に一致する技術者」に出会えることは稀です。そのため、会社側も妥協して近しい領域のエンジニアをアサインします。

結果として、自分の得意分野ではない現場で、十分な学習時間も与えられないまま「ベテランなんだからできるだろう」と追い詰められる構造が生まれてしまうのです。

3. 「向いていない」と感じた時にまず打つべき3つのリファクタリング(対処法)

世の中のキャリアアドバイスでは「すぐ転職しよう」「新しいプログラミング言語を学ぼう」と言われがちですが、ある程度キャリアを積んだベテランにとって、全く違う異業種への転身や、ゼロからの技術習得は非常にコストが高い戦略です。

まずは「今の仕事、今の環境のままで、どうシステム(自分)を安定稼働させるか」を考えるべきです。

ステップ1:自分の「強み」の棚卸し(アセットの確認)

まずは、これまで自分が少しでも「楽にできたこと」「人から頼まれて苦にならなかったこと」を、技術・非技術を問わずノートに書き出してみてください。

「バッチ処理の設計が好き」「1対1の調整なら得意」「仕様書のドキュメント作成なら綺麗に書ける」など、小さなアセット(資産)を明確に言語化します。自分の得意な処理パターン(強み)を自覚することが、最初の防御壁になります。

ステップ2:強みの言語化を持った上での「異動の願い出」

「今の現場がつらいから変えてほしい」とだけ上司に伝えても、上司はあなたの得意分野を理解していないため、また似たようなスキルアンマッチの現場に配置されてしまう可能性が高いです。

ステップ1で整理した強みをベースに「私は〇〇の領域でパフォーマンスを発揮できるので、そうした要素が含まれるプロジェクトへシフトしたい」と、具体的な条件を提示して異動を願い出るのが効果的です。

ステップ3:年齢に応じたポジションを見極めるための「転職検討」

もし、社内の構造上、自分の強みを活かせるポジションがどうしても用意されない場合は、そこで初めて外の選択肢(転職)を視野に入れます。

例えば、ベテランになって現場でものづくり(コーディング)を続けたくても、会社からは管理業務ばかりを求められる、というギャップはよく起こります。自分の年齢と、持っている強みが最も綺麗に噛み合う「別の組織」を探すという視点を持つことで、理不尽な自責のループから抜け出すことができます。

まとめ:不一致を自分の「適性」のせいにしないこと

私が今でもこの業界でサバイバルできているのは、「自分の得意なところ(コミュニケーションとUNIX、データベースの知識)を軸に仕事のメインを組み立て、苦手な領域は周囲の得意な人の力を借りる」という役割分担の最適化ができるようになったからです。

システムエンジニアという仕事そのものに向いていない人など、そうそういません。多くの場合、自分の特性の「取り扱い説明書」が曖昧なまま、スキルの合わない戦場に送り込まれて消耗しているだけなのです。

もし今、あなたが「向いていないのではないか」と1人で悩んでいるなら、まずは一度立ち止まって、手元にあるあなたの強みを棚卸ししてみてください。

それでもなお、同じような理不尽な現実や自責の念を繰り返してしまうという場合は、知らず知らずのうちに自分を追い詰める「無意識のこだわり(思考の癖)」がシステムを阻害している可能性があります。

私自身がそのバグに気づき、心身の危機から生還したプロセスについては、ぜひ以下のシリーズ記事を参考にしてみてください。

👉 【HSP SEのキャリア術 第1回】50代ベテランSEが直面する『仕事のギャップ』と心身のオーバーフローを防ぐアプローチ

あなたのエンジニア人生が、無理な高負荷駆動ではなく、最適化されたクリーンな状態で続くことを心から応援しています。

この記事を書いた人

たなやん
  • システムエンジニア歴20年以上
  • 2年でうつ病を完全寛解
  • 現在はうつ病以前よりメンタルを楽に仕事に従事中
  • HSP気質を持つもそれも力に!
  • 心理学系講座講師

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